㈡ 居住者の納税義務
1 外国税額控除
⑴ 改正前の制度の概要
平成26年度税制改正において国際課税原則の 帰属主義への見直しが行われ、所得税法関係の 法令については、法律事項のみ整備されていま す。
① 制度の概要
居住者が各年において外国所得税を納付す ることとなる場合には、次の算式により計算 した金額(以下「控除限度額」といいます。)
を限度として、その外国所得税の額(通常行 われる取引と認められない取引に基因して生 じた所得に対して課される外国所得税の額そ の他一定の外国所得税の額を除きます。以下
「控除対象外国所得税の額」といいます。)を その年分の所得に対する所得税の額から控除 することとされています(所法95①、所令 222)。
《算式》
控除限度額 = その年分の所得税の額 ×
その年分の国外 所得総額 その年分の所得 総額
② 国外源泉所得
平成26年度税制改正前において、居住者の 外国税額控除に係る控除限度額の計算におけ る国外源泉所得は、非居住者課税における国 内源泉所得の概念を借用し、この国内源泉所 得の範囲を明らかにすることにより、その反 対概念としての国外源泉所得をとらえ、国内 源泉所得以外の所得をいうこととされていま した。
平成26年度税制改正により国内源泉所得で ある国内事業所得の範囲が恒久的施設帰属所 得とされることから、国外源泉所得である国 外事業所得についても同様に国外事業所等帰 属所得として積極的に定義した上で内部取引 損益の認識や移転価格課税に相当する調整を 行うことが適当と考えられ、また、「国内源 泉所得以外の所得」という規定の下での国外 源泉所得の範囲に不明確さがあったことから、
国外源泉所得の範囲について「国内源泉所得 以外の所得」という規定の仕方を改め、積極 的に「国外源泉所得」を定義することとされ ています(所法95④)。
具体的には、国外源泉所得は、次に掲げる 17種類に区分して定められています。
イ 国外事業所等帰属所得
イ 国外事業所等帰属所得の概要
居住者が国外事業所等を通じて事業を 行う場合において、その国外事業所等が その居住者から独立して事業を行う事業 者であるとしたならば、その国外事業所 等が果たす機能、その国外事業所等にお いて使用する資産、その国外事業所等と その居住者の事業場等との間の内部取引 その他の状況を勘案して、その国外事業 所等に帰せられるべき所得(その国外事
業所等の譲渡により生ずる所得を含み、
下記ヨに該当するものを除きます。以下
「国外事業所等帰属所得」といいます。)
とされています(所法95④一)。
国外事業所等とは、国外にある恒久的 施設に相当するものその他の一定のもの をいいます。また、事業場等とは、その 居住者の事業に係る事業場その他これに 準ずる一定のもので、その国外事業所等 以外のものをいいます。
居住者の国外事業所等が複数ある場合 には、それぞれの国外事業所等ごとに国 外事業所等帰属所得を認識し、その計算 を行います。また、国外事業所等とは恒 久的施設に相当するものなので、例えば 同一国に複数の事業活動の拠点が所在す る場合には、当該同一国の複数の拠点の 集合を一つの国外事業所等として国外事 業所等帰属所得を計算することになりま す。
ロ 国外事業所等帰属所得に係る内部取引 上記イにおける内部取引とは、居住者 の国外事業所等と事業場等との間で行わ れた資産の移転、役務の提供その他の事 実で、独立の事業者の間で同様の事実が あったとしたならば、これらの事業者の 間で、資産の販売、資産の購入、役務の 提供その他の取引が行われたと認められ るものをいいます(所法95⑥)。
ただし、AOAにおいては恒久的施設 と本店等との間の内部債務保証や内部再 保険を内部取引として認識しないことを 踏まえ、この内部取引からは、資金の借 入れに係る債務の保証、保険契約に係る 保険責任についての再保険の引受けその 他これに類する一定の取引を除くことと されています。
また、従来のOECDモデル租税条約第 7 条において無形資産の内部使用料及び 金融機関以外の一般事業会社の内部利子
を認識しないと解されていることを踏ま え、国外事業所等が従来のOECDモデル 租税条約第 7 条相手国に所在する場合に は、内部取引には、居住者の国外事業所 等と事業場等との間の利子(これに準ず るものとして一定のものを含みます。)
の支払に相当する事実その他一定の事実 は、含まれないものとされています(所 法95⑧)。
ロ 国外にある資産の運用又は保有により生 ずる所得(所法95④二)
ハ 国外にある資産の譲渡により生ずる所得 として一定のもの(所法95④三)
ニ 国外において人的役務の提供を主たる内 容とする事業で一定のものを行う者が受け るその人的役務の提供に係る対価(所法95
④四)
ホ 国外にある不動産、国外にある不動産の 上に存する権利若しくは国外における採石 権の貸付け(地上権又は採石権の設定その 他他人に不動産、不動産の上に存する権利 又は採石権を使用させる一切の行為を含み ます。)、国外における租鉱権の設定又は非 居住者若しくは外国法人に対する船舶若し くは航空機の貸付けによる対価(所法95④ 五)
へ 所得税法第23条第 1 項(利子所得)に規 定する利子等及びこれに相当するもののう ち次に掲げるもの(所法95④六)
イ 外国の国債若しくは地方債又は外国法 人の発行する債券の利子
ロ 国外にある営業所、事務所その他これ らに準ずるもの(②において「営業所」
といいます。)に預け入れられた預金又 は貯金(所得税法第 2 条第 1 項第10号に 規定する政令で定めるものに相当するも のを含みます。)の利子
ハ 国外にある営業所に信託された合同運 用信託若しくはこれに相当する信託、公 社債投資信託又は公募公社債等運用投資
信託若しくはこれに相当する信託の収益 の分配
ト 所得税法第24条第 1 項(配当所得)に規 定する配当等及びこれに相当するもののう ち次に掲げるもの(所法95④七)
イ 外国法人から受ける所得税法第24条第 1 項に規定する剰余金の配当、利益の配 当、剰余金の分配又は基金利息
ロ 国外にある営業所に信託された投資信 託(公社債投資信託並びに公募公社債等 運用投資信託及びこれに相当する信託を 除きます。)又は特定受益証券発行信託 に相当する信託の収益の分配
チ 国外において業務を行う者に対する貸付 金(これに準ずるものを含みます。)で当 該業務に係るものの利子(一定の利子を除 き、債券の買戻又は売戻条件付売買取引と して一定のものから生ずる差益として一定 のものを含みます。)(所法95④八)
リ 国外において業務を行う者から受ける次 に掲げる使用料又は対価で当該業務に係る もの(所法95④九)
イ 工業所有権その他の技術に関する権利、
特別の技術による生産方式若しくはこれ らに準ずるものの使用料又はその譲渡に よる対価
ロ 著作権(出版権及び著作隣接権その他 これに準ずるものを含みます。)の使用 料又はその譲渡による対価
ハ 機械、装置その他一定の用具の使用料 ヌ 次に掲げる給与、報酬又は年金(所法95
④十)
イ 俸給、給料、賃金、歳費、賞与又はこ れらの性質を有する給与その他人的役務 の提供に対する報酬のうち、国外におい て行う勤務その他の人的役務の提供(内 国法人の役員として国外において行う勤 務その他の一定の人的役務の提供を除き ます。)に基因するもの
ロ 外国の法令に基づく保険又は共済に関
する制度で所得税法第31条第 1 号及び第 2 号(退職手当等とみなす一時金)に規 定する法律の規定による社会保険又は共 済に関する制度に類するものに基づいて 支給される年金(これに類する給付を含 みます。)
ハ 所得税法第30条第 1 項(退職所得)に 規定する退職手当等のうちその支払を受 ける者が非居住者であった期間に行った 勤務その他の人的役務の提供(内国法人 の役員として非居住者であった期間に行 った勤務その他の一定の人的役務の提供 を除きます。)に基因するもの
ル 国外において行う事業の広告宣伝のため の賞金として一定のもの(所法95④十一)
ヲ 国外にある営業所又は国外において契約 の締結の代理をする者を通じて締結した保 険業法第 2 条第 6 項に規定する外国保険業 者の締結する保険契約その他の年金に係る 契約で一定のものに基づいて受ける年金
(年金の支払の開始の日以後に当該年金に 係る契約に基づき分配を受ける剰余金又は 割戻しを受ける割戻金及び当該契約に基づ き年金に代えて支給される一時金を含みま す。)(所法95④十二)
ワ 次に掲げる給付補塡金、利息、利益又は 差益(所法95④十三)
イ 所得税法第174条第 3 号(内国法人に 係る所得税の課税標準)に掲げる給付補 塡金のうち国外にある営業所が受け入れ た定期積金に係るもの
ロ 所得税法第174条第 4 号に掲げる給付 補塡金に相当するもののうち国外にある 営業所が受け入れた同号に規定する掛金 に相当するものに係るもの
ハ 所得税法第174条第 5 号に掲げる利息 に相当するもののうち国外にある営業所 を通じて締結された同号に規定する契約 に相当するものに係るもの
ニ 所得税法第174条第 6 号に掲げる利益